やさいだより           No.169  2000年 10月27日(金)

よく考えてみると、なぜ農業をしているのか分からなくなります。
体はきついし、決まった休みがあるわけでもない。ぜんぜんカッコ良くないし、おしゃれじゃない。
はじめの頃は周りの人によく聞かれました。「農業好きなんでしょ?」と。
でも、「はい」と答えられなくて、相手は納得のいかない顔をします。
脱サラで農業を選ぶのは特別なことですか?

農業を仕事にして初めて分かったのですが、確かにきつい、危険でもあります。
好きでなければやらないと考えるのは当たり前です。
全然興味はなかったのですが、なんとなく始めてしまった農業も、
今では「好きかも」と思うことも多くなりました。

あまりにも天気の良い日には、近くの公園や川原でランチを楽しみ、
少し仕事の余裕があれば、午前中だけ働いて午後から休みにすることもあります。
もちろん多忙な時期は一ヶ月休みなし、なんてこともありますが、
仕事の合間に度々空を見上げて青く光る空に幸せになります。
鳥の声や虫の声を聞きながら働けますし、爽やかな風も厳しい風も感じます。
汗と疲労でビールがおいしい、ご飯もおいしい。
山の木々が春に芽吹いて緑がだんだん濃くなって秋に紅葉して、そして葉をおとす。
そんな変化も全て知っています。

こんなに自由で人間らしい仕事があるでしょうか?
やっぱりやめられないな、と思うのです。
仕事をしていると、よく「楽しそうに見えるよ」と言われます。
案外、周りの人の方がよく見えているのかも。
さちこ